(ハーグ条約)国際養手縁組に関する子の保護及び協力に関する条約(仮約)〔抄〕
1993年5月29日作成法務省民事局『民事月報』より転載
この条約の署名国は、
子が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で、幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきことを認め、
各国が、第一次的には子がその出身家庭の保護の下にとどまることができるための適切な手段をとるべきであることを想起し、
国際養子縁組か、出身国において相応しい家庭が見つからない子のために恒久的な家族の利益を提供するものであることを認識し、
国際養子縁組が子の最善の利益に基づき、かつ、その基本的権利を尊重してのみ行われることを確保するための、及び子の奪取、売買及び取引を防止するための措置を講ずる必要性を確認し、
(中略)
次のとおり協定した。
第一章 条約の適用範囲
第一条
この条約の目的は、次のとおりである。
a 国際養子縁組が、子の最善の利益に基づき、かつ、国際法により認められた子の基本的権利を尊重して、行われることを確保するための保障措置を定めること。
b 前号の保障措置の遵守を確保し、よって子の奪取、売買及び取引を防止するための締約国間の協力の制度を定めること。
第二章 国際養子縁組のための要件
第四条
この条約の適用を受ける縁組は、出身国の権限ある当局により次の措置がされた場合でなければ、これをしてはならない。
a 子が縁組可能であることが認定されたこと。
b 子を出身国において託置する可能性に対し適正な考慮がされた後、国際養子縁組が子の最善の利益に合致するとの決定がされたこと。
c 次のことが確保されたこと。
(1) 縁組のためにその同意が必要とされる者、機関及び当局が、必要な相談を受け、かつ、その同意及び縁組の効果、特に縁組による子と出身家庭との法的関係の断絶の有無に関し、適正に知らされたこと。
(2) 上記の個人、機関及び当局が、自由な意思に基づき、法定の方式によって同意を与え、かつ、書面によりこれが明らかにされていること。
(3) 上記の各同意が、いかなる種類の金銭の支払又は対価をも誘因とするものではなく、かつ、撤回されていないこと。
(4) 実母の同意が必要とされる場合には、その同意が、子の出生後にのみ与えられたものであること。
並びに
d 子の年齢及び成熟段階を考慮して、次のことが確保されたこと。
(1) 子が、相談を受け、かつ、縁組の効果及び縁組に対する子の同意が必要な場合にはその同意の効果につき適正に知らされたこと。
(2) 子の希望及び意見に考慮が払われたこと。
(3) 子の同意が必要とされる場合には、縁組に対する子の同意が、自由な意思に基づき、法定の方式により与えられ、かつ、書面によりこれが明らかにされていること。及びその同意が、いかなる種類の金銭の支払又は対価を誘因とするものではないこと。
第五条
この条約の適用を受ける縁組は、受入国の権限ある当局により次の措置がされた場合でなければ、これをしてはならない。
a 養親となろうとする者が、縁組をする資格を有し、かつ、縁組をするのに適しているとの決定がされたこと。
b 養親となろうとする者が、必要な協議を受けたことが確保されたこと。
及び
c 子が、受入国へ入国し、かつ、永住することが認められ、又は認められるであろうとの決定がされたこと。
第三章 中央当局及び認可された国体
第六条
1 締約国は、この条約に定める義務を履行するための中央当局を指定するものとする。
2 連邦制の国、二以上の法制を有する国又は自治権を有する領域単位を持つ国は、以上の中央当局を指定し、各当局の権能の領域的な又は人的な範囲を指定することができる。(後略)
第七条
1 中央当局は、子の保護のため及びこの条約のその他の目的を実現するため、互いに協力し、かつ、それぞれの国の権限ある当局間の協力を促進するものとする。
2 中央当局は、次の事項を行うため、直接あらゆる適切な措置をとること。
a 養子縁組に関する自国の法律及び統計、一般書式その他の一般的な情報の提供をすること。
b この条約の運用に関する情報交換をすること及びその適用に当たっての障害を可能な限り除去すること。
第八条
中央当局は、直接に、又は公的当局を通じて、養子縁組に関する不当な財政的利得又はその他の利得の獲得を妨げ、かつ、この条約の目的に反するすべての不当な慣行を防止するため、あらゆる適切な措置をとるものとする。
第九条
中央当局は、直接に、又は公的当局若しくはそれぞれの国で適正に認可を受けた国体を通じて、特に次の事項を行うため、あらゆる適切な措置をとる。
a 養子縁組を実現させるのに必要な限度で、子及び養親となろうとする者のおかれた状況に関する情報を収集し、保存し、又は交換すること。
b 養子縁組を成立させるため、手続きを容易にし、把握し、又は促進すること。
c その国における養子縁組に関する相談サービス及び養子縁組後のサービスの発展を促進すること。
d 国際養子縁組に関する経験についての一般的な評価報告書を互いに提供すること。
e その国の法により認められた限度で、他の中央当局又は公的当局からの特定の養子縁組の状況に関する情報を求める正当な要求に応ずること。
第一一条
認可された国体は、次の要件を満たすものでなければならない。
a 認可国の権限ある当局が定める条件に従い、かつ、その制限の範囲内で非営利目的のみを追求すること。
b 倫理的基準により、かつ、訓練又は経験により国際養子縁組の分野で活動するための資格を認められた者が理事及び職員であること。
c 構成、運営及び財政につき同国の権限ある当局の監督を受けること。
第四章 国際養子縁組の手続的要件
第一四条
ある締約国に常居所を有する者であって、他の締約国に常居所を有する子との縁組を望むものは、その者が常居所を有する国の中央当局に申靖しなければならない。
第一五条
1 受入国の中央当局は、申請者が、縁組をする資格を有し、かつ、縁組をするのに適していると認めた場合には、その身元、縁組の資格及び適格性、背景、家族史及び病歴、社会的環境、縁組の理由、国際養子縁組を行う能力並びにその者が養育するのに適しているであろう子の性格的特徴に関する報告書を作成する。
2 受入国の中央当局は、出身国の中央当局に対し、前項の報告書を送付する。
第23条
国際養子縁組においては、原則として、養子縁組の法的有効性が両当事国において保障されなければならない。
第24条
子の国籍が里親となる者の国籍と異なる場合には、子が国籍を有する国の法律と養親となる者の国の法律の双方について、それぞれしかるべきウェートが与えられなければならない。同時に、子の文化的、宗教的バックグラウンドや諸利益に対し、十分な配慮がなされなければならない。